採用担当者がAIを使って求人票を最適化、応募数が2.3倍になった実践レポート

採用担当者がAIを使って求人票を最適化、応募数が2.3倍になった実践レポート
シェア:

「また今月も応募ゼロか」——採用担当ひとりが抱えていた重圧

愛知県にある従業員50名の精密部品メーカー。私が人事・採用担当として入社したのは3年前のことです。総務と兼任で、採用業務に割ける時間は週に数時間程度。それでも会社からは「製造ラインの品質管理スタッフを毎年2〜3名採用してほしい」というプレッシャーがかかっていました。

求人媒体はIndeedとdodaを使っていました。掲載費用は合わせて月8万円ほど。それだけ払っているのに、ある月の応募数はわずか3件。しかも3件のうち2件は明らかにミスマッチで、書類選考の段階で落とさざるを得ない状況でした。上司からは「お金をかけているのに何で人が来ないんだ」と言われ、私自身も「求人票の書き方が悪いのかもしれない」と薄々感じていたものの、何をどう直せばいいのかがわからない。そんな状態が1年以上続いていました。

転機が訪れたのは、ある採用担当者向けのオンラインセミナーでのことです。「求人票はマーケティングのコピーライティングと同じ。読んだ人が行動したくなる文章を書かなければ意味がない」という講師の言葉が刺さりました。でも私はコピーライターでも、マーケターでもない。そこで思い当たったのが、当時話題になっていたChatGPTでした。


AI導入前——「うちの会社の求人票」の実態

当時の求人票を今見返すと、正直、恥ずかしくなります。仕事内容の欄には「製造ラインにおける品質管理業務全般」とだけ書いてありました。全般って何だ、という話ですよね。

給与欄は「月給22万円〜(経験・能力により優遇)」。これも曖昧です。残業については「残業あり」の一言。福利厚生は「社会保険完備、交通費支給、昇給あり」というテンプレートそのまま。職場の雰囲気については「アットホームな職場です。未経験の方も歓迎!」と書いていました。

今思えば、これは求職者の立場からすると何も伝わらない求人票です。「残業あり」と書いてあったら、ブラック企業なのかもしれないと思われる。「アットホーム」は使い古された言葉で信頼されない。「全般」という表現は、逆に「何でもやらされるのでは」という不安を与えます。

実際、Indeedのダッシュボードを確認すると、求人票のクリック率(表示された回数に対してクリックされた割合)は平均2.1%。業界平均が3〜5%と言われているので、かなり低い数値でした。クリックされた人のうち実際に応募する割合(応募転換率)も11%程度で、こちらも低水準。つまり「見てもらえていない」「見ても応募したくならない」という二重の問題を抱えていたわけです。


なぜChatGPTを選んだのか——ツール選定の経緯

最初はChatGPT以外のツールも検討しました。採用特化のAIツールとして「engage」や「HRMOS採用」なども調べましたが、月額費用が高く、中小企業の私には手が届きにくかった。一方でChatGPT(GPT-4)は月額3,000円以下で使えて、汎用性も高い。

決め手になったのは、知人の採用担当者が「ChatGPTで求人票を書き直したら応募が増えた」という話をSNSでしていたことです。実際に試してみると、思った以上に「採用コピーライティング」に強いことがわかりました。求職者の心理を踏まえた文章の書き方、業界ごとの言葉遣いの傾向、ペルソナ設計など、かなり専門的な観点でアドバイスをくれます。

ただし、最初から「ChatGPTに求人票を書いてもらう」という発想は間違いでした。AIに丸投げしても、会社の実態や職場の空気感は伝わらない。あくまで「自分が書いた素材をAIで磨く」「AIに問いを立ててもらい、自分で答えを出す」という使い方が正解だと後から気づきます。


ステップ1——ターゲットペルソナの設計

最初にやったことは、「誰に来てほしいのか」を言語化することでした。これまでの求人票は、漠然と「品質管理ができる人」に向けて書いていました。でも、求職者には様々なタイプがいます。

ChatGPTに以下のプロンプトを入力しました。

「製造業(精密部品メーカー、従業員50名)の品質管理スタッフを採用したいと考えています。この職種に応募してくる可能性がある求職者のペルソナを3パターン作成してください。それぞれのペルソナについて、年齢・職歴・転職理由・仕事に求めるもの・不安に思っていること・求人票を見るときに重視するポイントを詳しく教えてください。」

返ってきた3つのペルソナは以下のようなものでした。

  • ペルソナA(安定重視型・30代前半):前職は中規模の製造業。会社の業績不振でリストラを経験。次は長く働ける会社を探している。給与よりも「安定性」と「離職率の低さ」を重視。求人票では「平均勤続年数」「業績推移」「正社員比率」などを確認する。
  • ペルソナB(スキルアップ型・20代後半):製造業の現場作業から品質管理へキャリアチェンジしたい。資格取得支援や研修制度に強い関心を持つ。「QC検定の取得支援あり」「OJTで先輩が丁寧に教えます」という表現に惹かれる。
  • ペルソナC(ワークライフバランス型・30代後半・子育て中):前職は残業が多く、家族との時間が取れなかった。残業時間・有給取得率・育休実績を最優先で確認する。「残業あり」という一言で応募をやめる可能性が高い。

このペルソナを見て、ハッとしました。私が今まで書いていた求人票は、誰のペルソナにも刺さっていなかったのです。「残業あり」という一言はペルソナCを確実に逃がしていた。「アットホーム」という表現はペルソナAが求める「安定性の証拠」を何も提供していなかった。


ステップ2——既存の求人票を「解剖」する

次に、既存の求人票全文をChatGPTに貼り付け、こんなプロンプトを投げました。

「以下は現在掲載中の求人票です。求職者の視点から見て、応募を躊躇させる表現・信頼性を損なう表現・魅力が伝わっていない部分を10個以上、具体的に指摘してください。また、それぞれについて改善案も提示してください。」

返ってきた指摘の中で、特に刺さったものをいくつか紹介します。

  • 「残業あり」→「月平均残業8時間、繁忙期(3月・9月)でも月20時間未満」:曖昧な「あり」は最悪を想定させる。実態が良いなら数字で示すべき。
  • 「アットホームな職場」→「社員の平均勤続年数9.2年、育休取得率100%(過去5年)」:抽象的な形容詞ではなく、定着率を証明するデータを使う。
  • 「品質管理業務全般」→具体的な1日の業務フローを箇条書きで記載:「全般」という言葉は不安を煽る。入社後のイメージが湧く記述に変える。
  • 「未経験歓迎」の根拠が不明:なぜ未経験でも大丈夫なのか?研修制度、OJT期間、先輩のサポート体制などを具体的に書く。

指摘を受けて、社内で実際の数字を集め直しました。平均勤続年数は人事データから確認。育休取得率は過去5年分を計算。残業時間は勤怠システムから月別平均を算出。こうして「書けるデータ」を揃えてから、書き直しに入りました。


ステップ3——3バリエーションの求人票を作成する

ペルソナが3つあるなら、求人票も3パターン作ればいい。そう考えて、次のプロンプトを使いました。

「以下の情報をもとに、品質管理スタッフの求人票を3バリエーション作成してください。①安定性・長期就業を重視する求職者向け ②スキルアップ・キャリア形成を重視する求職者向け ③ワークライフバランス・残業の少なさを重視する求職者向け。それぞれのペルソナが最も気にするポイントを冒頭に配置し、全体のトーンも変えてください。使用できる情報:[会社概要・給与・勤務時間・残業実績・育休取得率・平均勤続年数・研修制度・1日の業務フロー]」

出てきた3つのバリエーションは、同じ会社の求人票とは思えないほど雰囲気が違いました。①は冒頭に「創業28年、社員の平均勤続年数9.2年。一度入ったら長く働ける環境があります」と始まる。②は「入社後6ヶ月間のOJT研修で、品質管理の基礎から実践まで体系的に学べます。QC検定3級の取得支援制度あり」という書き出し。③は「月平均残業8時間。17時30分定時退社が当たり前の職場です」と始まる。

これをIndeedとdodaに媒体を分けて掲載しました。Indeedには①と③を、dodaには②を。また、掲載タイトルも媒体ごとに変えました。


ぶつかった壁——「AIの文章は薄い」という現実

ここで正直に失敗談を書かせてください。最初にChatGPTが生成した求人票をそのまま使ったら、上司から「なんか薄いな。うちの会社っぽくない」と言われました。確かに、読み返すと「どこにでもありそうな求人票」になっていた。

問題は、私がChatGPTに渡した情報が少なすぎたことです。「会社概要・給与・勤務時間」だけ渡して「求人票を書いて」と言っても、AIには会社の個性が伝わらない。製造現場の具体的な様子、社員同士の関係性、社長の人柄、工場の清潔さ——そういった「空気感」をインプットしなければ、没個性な文章しか出てこないのは当然です。

もう一つの失敗は、「AIが書いた文章をそのまま使おうとした」ことです。AIの文章は確かに構造的で読みやすいのですが、どこか「きれいすぎる」。実際の職場の温度感が伝わらない。


失敗を乗り越えた方法——「素材集め」に全力を注ぐ

改善策として取り組んだのが、「AIに渡す素材の質を上げる」ことでした。具体的には以下の3つをやりました。

①現場社員へのインタビュー

品質管理部門の社員3名に15分ずつヒアリングをしました。「この仕事のどんなところが好きですか」「入社前に不安だったことは何ですか」「職場の雰囲気をひと言で表すと?」という質問を投げかけました。返ってきた言葉の中に、求人票に使えるリアルな表現が山ほどありました。

たとえば、ある社員は「不良品が出たときに原因を突き止めて、再発防止策を立てる瞬間が一番やりがいを感じる。パズルを解くみたいで楽しい」と言いました。この「パズルを解くみたい」という表現は、そのまま求人票のキャッチコピーに使えると思いました。

②ChatGPTへのインプットを大幅に増やす

インタビューの内容、職場写真の説明文、会社の歴史、社長のメッセージ、製品の特徴——これらをすべてChatGPTに渡して「この情報をもとに、求職者が『ここで働いてみたい』と思えるような求人票を書いてください」と依頼しました。インプットが増えると、アウトプットの質が劇的に上がりました。

③AI生成文を「叩き台」として人間が手を加える

ChatGPTが生成した文章を70点として、残り30点は自分で手を加えることにしました。現場社員のインタビューで出た生の言葉を差し込む、数字を最新のものに更新する、会社特有のエピソードを追加する。この「AI+人間の編集」という組み合わせが、最終的な求人票の質を決めました。


さらに効果を高めたプロンプトの工夫

試行錯誤の中で、特に効果的だったプロンプトのパターンをいくつか紹介します。

「応募しない理由を先に潰す」プロンプト

「この求人票を見た求職者が、応募をやめる可能性がある理由を5つ挙げてください。そして、それぞれに対して求人票の中で先手を打てる表現を提案してください。」

このプロンプトが特に効果的でした。たとえば「中小メーカーだから経営が不安定かも」という懸念に対して、「創業28年、取引先は国内上場企業15社を含む安定した受注基盤を持っています」という一文を追加しました。

「求人票のタイトルを10パターン作る」プロンプト

「この求人票のタイトル(キャッチコピー)を10パターン作成してください。クリックしたくなる表現、数字を使ったもの、働く人のメリットを前面に出したもの、など異なるアプローチで。」

Indeedではタイトルがクリック率に直結します。「品質管理スタッフ募集」というタイトルから「月残業8時間・勤続9年超の安定メーカーで品質管理スタッフ」に変えただけで、クリック率が2.1%から4.7%に上がりました。


最終的な成果——数字で見る改善効果

改善前と改善後(ともに同じ媒体・同じ掲載期間30日間)を比較すると、以下の変化がありました。

  • 月間応募数:平均4.2件 → 9.7件(約2.3倍)
  • Indeedクリック率:2.1% → 4.7%(約2.2倍)
  • 応募転換率(クリック→応募):11% → 19%(約1.7倍)
  • 書類選考通過率:改善前38% → 改善後61%(ミスマッチ応募が減少)
  • 内定承諾率:改善前50% → 改善後75%

応募数が増えただけでなく、「ミスマッチ応募が減った」という副次効果も大きかった。ペルソナを明確にして、そのペルソナに合った情報を正直に書いたことで、「自分に合っている」と感じた人だけが応募してくるようになったのだと思います。

結果として、その年は目標の3名採用に対して4名を採用することができました。しかも採用コストは前年比で約30%削減。掲載費用は同じでも、採用までのプロセスが効率化されたためです。


この経験から伝えたいこと

この取り組みを通じて、私が最も強く感じたのは「求人票は会社のプロダクトだ」ということです。どんなに良い製品でも、パッケージが悪ければ売れない。どんなに良い職場でも、求人票が悪ければ人は来ない。

AIはその「パッケージを磨く」作業を劇的に効率化してくれます。ただし、AIに丸投げしても意味がない。AIは「構造」と「表現の型」を提供してくれますが、「中身」は自分で集めなければならない。現場社員の生の声、会社固有のデータ、職場の空気感——これらをしっかりインプットして初めて、AIは力を発揮します。

もう一つ大切なことは、「求職者が何を不安に思っているか」を常に意識することです。求人票を書くとき、私たちはつい「会社の良いところを伝えよう」という発想になります。でも求職者は「ここに入ったら後悔しないか」という不安を抱えながら求人票を読んでいる。その不安を先回りして解消できる求人票が、応募につながります。

ChatGPTを使った求人票の最適化は、特別なスキルは不要です。私自身、コピーライティングの経験もマーケティングの知識もゼロからスタートしました。必要なのは「求職者の視点で読み直す習慣」と「AIを壁打ち相手として使う姿勢」だけです。採用に悩んでいる採用担当者の方には、ぜひ一度試してみてほしいと思います。最初のプロンプトは「今の求人票の改善点を10個指摘してください」——それだけで十分です。

シェア: