住宅リフォーム会社の営業担当がClaudeで見積書・提案書を週8時間から40分に短縮
住宅リフォーム会社の営業担当がClaudeで見積書・提案書を週8時間から40分に短縮
「また今週も提案書が間に合わなかった……」
土曜日の夜11時、パソコンの前でため息をついていた自分を、今でも鮮明に思い出します。私は埼玉県内の中小住宅リフォーム会社に勤める営業担当・田中誠(35歳)です。築20〜30年の住宅オーナーをメインターゲットに、キッチン・浴室・外壁塗装などのリフォームを提案する仕事をしています。
お客様との現地調査が終わったあと、「来週中に見積もりと提案書を送ります」と約束するのは当たり前。でも実際には、1件あたりの提案書作成に平均2〜3時間かかっていました。週に3〜4件の現場を抱えると、それだけで週8時間以上が提案書作業に消えていく。本来やるべき顧客フォローや新規開拓の時間が、どんどん圧迫されていたんです。
この記事では、AIツール「Claude」を使って、その提案書作成時間を週8時間から40分まで短縮した実際の方法を、失敗談も含めて包み隠さずお伝えします。「難しそう」と思っている方こそ、ぜひ読んでみてください。
なぜAIを使おうと思ったのか──限界だった「手作業の壁」
きっかけは、2025年の秋に参加した地元商工会議所の勉強会でした。同業の先輩が「最近はAIで資料作成を効率化している」という話をしていて、最初は「うちみたいな小さな会社には関係ないかな」と流していたんです。
でもその翌月、ちょうど繁忙期が重なって週10件以上の現場対応が入りました。提案書の締め切りに追われ、2件のお客様に「もう少しお待ちください」という連絡をしてしまった。そのうちの1件は、待ちきれなくなったのか他社に流れてしまいました。失注金額はおよそ80万円。それが決定打でした。
「このままでは体も仕事も持たない」と痛感して、勉強会で名刺交換していた先輩に連絡を取ったのが2025年11月のこと。先輩が使っていたのが、Anthropicが開発したAI「Claude(クロード)」でした。
ChatGPTは名前だけ知っていましたが、Claudeは正直ほとんど知らなかった。先輩曰く「長い文章の読み書きと、トーンを合わせた文章生成が得意」とのことで、見積書・提案書のような長文ドキュメント作成には向いているらしい。月額20ドルのClaudeProプランを契約して、まず1ヶ月試してみることにしました。
実際にどう使ったか──ツール・プロンプト・手順を全公開
全体の流れを整理する
まず、自分の提案書作成プロセスを書き出してみました。大きく分けると以下の5ステップです。
- 現地調査でメモ・写真を撮る(現場)
- 調査内容を整理してExcelに入力する(事務所)
- 過去の提案書テンプレートを引っ張ってきて文章を書き直す(事務所)
- 金額・仕様をWordに貼り付けて体裁を整える(事務所)
- PDF化してメールで送付する(事務所)
このうち、3と4に合計で2〜3時間かかっていました。「お客様の状況に合わせた文章」を毎回ゼロから考えるのが一番大変だったんです。Claudeで効率化できるとしたら、まさにこの部分だと気づきました。
使ったツールと環境
- Claude Pro(claude.ai):メインの文章生成ツール
- Excel:現場調査メモと数値の整理
- Microsoft Word:提案書の最終仕上げ
- スマートフォンのメモアプリ:現地でのヒアリング内容を音声入力で記録
特別なシステムは何も入れていません。今まで使っていたツールに、Claudeをはさむだけです。
プロンプトの作り込み──ここが一番大事
最初の1週間は、どんな指示を出せばいいか試行錯誤しました。結果として、私が使っているプロンプトは大きく3種類に分類されます。
プロンプト①:現地調査メモを提案書の「お客様の声・現状課題」に変換する
あなたは住宅リフォーム会社の優秀な営業担当です。以下の現地調査メモをもとに、お客様向けの提案書に掲載する「現状の課題と背景」セクション(300〜400文字)を書いてください。
【条件】
・お客様目線で共感できる表現にする
・専門用語はできるだけ避け、わかりやすい言葉を使う
・「このまま放置すると起こりうるリスク」を1〜2点自然に盛り込む
・押し売り感のない、寄り添うトーンで書く【現地調査メモ】
・築28年の木造2階建て
・キッチン:シンク下のパッキン劣化で水漏れ跡あり、扉の建て付けが悪い
・お客様の希望:「毎日使うから使いやすくしたい」「予算は100万円以内」
・家族構成:夫婦2人、子ども独立済み
・お客様の一言:「古くなった感じが気になっていたが、どこから手をつければいいかわからない」
このプロンプトを使うと、約30秒で400文字前後の「現状課題」セクションが完成します。以前は「どう書けばお客様の心に刺さるか」をうんうん考えながら20〜30分かけていた作業です。
プロンプト②:工事内容の説明文を生成する
住宅リフォームの提案書に掲載する「工事内容の説明」を書いてください。専門知識のない50〜60代のお客様が読むことを想定して、安心感と信頼感を伝える文章にしてください。
【工事内容の箇条書き(私のメモ)】
・システムキッチン撤去・新規設置(LIXIL Shiera S 2550mm)
・床下地補修(腐食あり)
・給排水接続工事
・タイル撤去・クロス張り替え(壁面)
・電気工事(IHコンロへの切り替え)【条件】
・各工事項目に2〜3文の説明を付ける
・なぜその工事が必要なのかの理由も含める
・合計400〜500文字程度でまとめる
プロンプト③:提案書全体の「まとめ・ご提案の要点」を生成する
以下の情報をもとに、リフォーム提案書の最終ページに掲載する「ご提案の要点」を書いてください。お客様が読んで「この会社に頼みたい」と感じられる内容にしてください。
【情報】
・工事名:キッチンリフォーム一式
・総工事費:98万円(税込)
・工期:約10日間
・お客様の主な懸念:「工事中の生活への影響」「アフターフォロー」
・弊社の強み:地元密着20年・自社施工・10年保証【条件】
・「工事費・工期・保証」の3点を必ずわかりやすく整理する
・お客様の懸念に対する回答を自然に盛り込む
・最後に「次のステップ(ご連絡先)」への誘導文を1文入れる
・200〜250文字で簡潔にまとめる
プロンプト④:比較提案(Aプラン・Bプラン)の説明文を作る
お客様に「予算重視プラン(Aプラン)」と「品質重視プラン(Bプラン)」の2つを提示します。それぞれの特徴と、どんなお客様に向いているかを比較説明する文章を書いてください。
【Aプラン】費用:78万円 / 標準グレードの国産メーカー品 / 機能はシンプル
【Bプラン】費用:98万円 / 上位グレード・省エネ機能付き / 長期的なランニングコストが下がる押し付けにならず、お客様が自分で選びやすいような中立的な表現で書いてください。各プラン200文字以内。
実際の作業フロー(40分でどうやって終わらせるか)
現在の私の作業フローはこうなっています。
- 現地から帰る車の中(移動時間・約10分):スマホの音声メモに「調査内容・お客様の発言・気になった点」を話しながら録音。帰社後にそのままテキストでClaudeに貼り付ける。
- 帰社後(約15分):プロンプト①〜③を順番に実行。各プロンプトの結果をWordの提案書テンプレートに貼り付けていく。Excelで計算済みの金額も同時に入力。
- 仕上げ確認(約10分):Claudeが出力した文章を読んで、固有名詞・金額・日付に誤りがないか確認。必要なら細かい言い回しを手修正。
- PDF化・送付(約5分):WordをPDF保存して、Claudeで生成したメール文(後述)とともに送付。
合計40分。以前の2〜3時間から大幅に短縮されました。
失敗談と改善──うまくいかなかったこと3つ
失敗①:プロンプトが曖昧すぎて使えない文章が出てきた
最初の1週間は正直、全然使えませんでした。「キッチンリフォームの提案書を書いて」とだけ入力したら、まるで教科書みたいな、どこのお客様にも当てはまる無味乾燥な文章が返ってきたんです。「当社はお客様のご要望に真摯に向き合い……」みたいな。これじゃ使えないと思いました。
改善策:プロンプトに「お客様の具体的な情報」を必ず入力するようにしました。年齢・家族構成・一番気にしていること・予算感・現場で言っていた一言など、できるだけ細かく入れる。情報量が増えるほど、Claudeの出力はぐっとリアルになりました。今では「お客様の一言」をそのまま引用させることも多いです。
失敗②:金額・仕様の数字をClaudeが「作ってしまった」
2回目の週に、ちょっと楽をしようと「金額も含めた提案書全体を作って」とプロンプトを投げたことがあります。そうしたら、私が入力していない金額や仕様がもっともらしく書かれていて、危うくそのままお客様に送るところでした。「○○工事一式:32万円」という数字が、どこから来たのか全くわからない。
改善策:金額・製品仕様・工期など「事実の数字」は絶対にClaudeに任せない、という自分ルールを作りました。Claudeはあくまで「文章を書く係」であり、数字の計算や仕様決定は自分で行うExcel作業と明確に分離しました。プロンプトの中でも「金額は以下の通りで、この数字を変えないでください」と明記するようにしています。
失敗③:社内の人間に「AI使ってるの?」と心配された
同僚から「最近の提案書、なんか文体が変わったね」と言われた時は焦りました。「AIっぽい文章じゃない?」とも言われて。確かに読み返すと、少し硬くて整いすぎている感じがあった。お客様には好評だったのですが、社内での信頼感に影響するかもと不安になりました。
改善策:Claudeの出力をそのまま使わず、「自分らしい口語的な表現に直す箇所を3か所は作る」というルールを設けました。また、プロンプトに「堅すぎず、話しかけるような温かみのある文体で」という指示を加えたことで、だいぶ自然な仕上がりになりました。今では同僚にも手順を教えて、チームで使うようになっています。
成果と数値──Before/Afterで見る変化
Claudeを導入してから約6ヶ月が経ちました。数字で見ると、変化はかなり明確です。
指標 | 導入前(2025年10月) | 導入後(2026年4月) | 変化 |
|---|---|---|---|
1件あたりの提案書作成時間 | 平均2〜3時間 | 平均40分 | 約75〜80%削減 |
週間の提案書作成時間合計 | 週8〜10時間 | 週40分〜1時間20分 | 週6〜8時間の削減 |
月の対応現場件数 | 平均12件 | 平均18件 | +6件(約50%増) |
提案書の提出スピード(現地調査からの日数) | 平均4〜5日後 | 平均1〜2日後 | 約60%短縮 |
成約率(提案→受注) | 約32% | 約41% | 約9ポイント改善 |
月間売上(個人) | 約280万円 | 約420万円 | 約50%増 |
残業時間(月平均) | 約35時間 | 約12時間 | 約66%削減 |
特に驚いたのが、成約率の改善です。提案書の提出スピードが上がったことで、「早く来てくれた」「丁寧な提案だった」という評価がお客様アンケートで増えました。競合他社よりも2〜3日早く提案書が届くことが、決め手になったケースが複数あります。
また、削減できた週6〜8時間を顧客フォローの電話や新規見込み客への訪問に使えるようになったことで、パイプラインの量が増えた。時間の使い方が変わると、売上への影響はこれほど大きいのかと実感しています。ツール代は月20ドル(約3,000円)。費用対効果で言えば、比較にならないくらいの投資回収ができています。
応用・発展──他にも広がるClaude活用
提案書の自動生成に自信がついてから、他の場面でもClaudeを使うようになりました。いくつか紹介します。
工事完了後のお礼メール・アフターフォロー文
工事完了後にお客様へ送る「完了報告・お礼メール」もClaudeに任せています。お客様の名前・工事内容・特記事項を入力するだけで、温かみのある個別メールが30秒で完成します。以前は定型文を使い回していたので、「ちゃんと覚えてくれてる」と感じてもらえるようになりました。
クレーム・要望対応の返答文草案
「工事後にクロスの継ぎ目が気になる」といったクレームへの返答文も、Claudeで草案を作ります。感情的になりやすい場面こそ、冷静で誠実な文章をAIに考えてもらって、自分で最終チェックする。これが意外と精神的に楽で、対応ミスも減りました。
社内向け現場報告書のフォーマット化
現在は社内に展開中ですが、現場担当者が音声メモを残せば、Claudeが現場報告書の下書きを作る仕組みを試験運用しています。施工管理担当の同僚も「書類仕事が半分になった」と話しています。
新人営業担当のトレーニング教材
うちの会社には今年4月に新入社員が1名入りました。過去の提案書や現地メモをClaudeに学習用サンプルとして使い、「こういう状況でどんな提案をするか」という練習問題と模範解答を自動生成するプロンプトを作りました。私が1対1で教える時間を半分以下に圧縮できています。
まとめ──「難しそう」と思っている方へ
この記事を読んで、「自分にはハードルが高そう」と思っている方もいるかもしれません。でも正直に言うと、私はITが得意なわけでも、AIについて詳しかったわけでもありません。最初の1週間は失敗続きで、「やっぱり自分には向いていないか」と思いかけたこともありました。
大事なのは「全部をAIに任せようとしないこと」です。金額・仕様・事実の確認は自分でやる。AIはあくまで「文章を形にする作業の代行者」として割り切って使う。そのルールさえ守れば、リスクは最小限に抑えられます。
週8時間が40分になるということは、週に7時間以上が返ってくるということです。その時間で私は、以前は後回しにしていた顧客フォローをできるようになりました。土曜の夜に提案書と格闘することもなくなりました。同じような悩みを抱えている営業担当の方がいれば、まず1件分だけClaudeで提案書を作ってみてください。きっと「もっと早く使えばよかった」と思うはずです。
ツール代は月3,000円。時間の価値には、到底かないません。