カフェのメニュー開発にChatGPTを使ったら、原価率が8%改善した話

カフェのメニュー開発にChatGPTを使ったら、原価率が8%改善した話
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鎌倉の小さなカフェが抱えていた「原価の泥沼」

鎌倉の路地裏に、私のカフェ「mado」はある。席数14席。観光客と地元の常連が半々くらいで、週末は行列ができることもある。オープンして5年、ありがたいことに売上は安定してきた。でも、毎年秋になると憂鬱になる理由があった。

季節メニューの開発だ。

秋冬メニューを入れ替えるたびに、原価計算のExcelシートと格闘する夜が続く。「このかぼちゃのスープ、材料費だけで180円かかってるのに700円で売ったら原価率25.7%……でも生クリームを少し増やしたら美味しくなるし……でも原価が……」という思考ループ。気づけば深夜2時になっていることもざらだった。

昨年の秋、その状況が大きく変わった。ChatGPTを使ったメニュー開発を試みたところ、原価率が38%から30%へと8ポイント改善したのだ。月商が変わらないのに、手元に残るお金が月に約12万円増えた計算になる。この記事では、そのプロセスを包み隠さず書いていきたいと思う。


AI導入前:「感覚」と「疲弊」で回していたメニュー開発

まず、当時の状況をきちんと整理しておきたい。

私のカフェでは、春夏・秋冬の年2回、レギュラーメニューに加えて5〜7品の季節限定メニューを追加している。これが売上の柱で、SNSで話題になったりメディアに取り上げられるのも大体この季節メニューだ。

問題は、開発プロセスが完全に「感覚ドリブン」だったこと。私が「美味しそう」と思ったものを試作して、気に入ったらメニューに入れる。原価計算は後付けで、「高すぎたら価格を上げればいい」という雑な判断をしていた。

その結果、昨年の夏メニューの原価率の内訳はこうなっていた。

  • 完熟マンゴーパフェ:原価率51%(大人気だが完全に赤字)
  • 自家製レモネード:原価率22%(利益は出るが単価が低い)
  • 抹茶ティラミス:原価率44%(インスタ映えで人気、でも利益ほぼゼロ)
  • コールドブリューコーヒー:原価率19%(売れ筋で利益の柱)
  • ピーチメルバ:原価率38%(まあまあ)

全体平均で38%。飲食業の目安とされる30%を大きく超えている。「人気メニューが赤字」という最悪のパターンだ。マンゴーパフェを注文されるたびに、内心「うっ」となっていた。

しかも、このメニュー開発に費やしていた時間が問題だった。試作に週2〜3回(1回あたり3〜4時間)、価格設定の計算に毎回2〜3時間、POP用の説明文作成に1〜2時間。季節メニューの入れ替え1回あたり、優に40〜50時間は使っていた。

「これ、自分の時給換算したらいくらになるんだろう」と考えたとき、少し怖くなった。


なぜChatGPTを選んだか——他のツールも試した正直な話

AI導入を検討し始めたのは、同じく鎌倉でカフェを経営している友人・Kさんの一言がきっかけだった。「ChatGPTにメニュー開発相談したら、思ってた以上に使えたよ」という、あまりにもシンプルな言葉。

最初は正直、信じていなかった。「AIにカフェのメニューなんてわかるの?」という感覚。でも、試作費用と時間の無駄に疲れていたこともあり、とりあえずやってみることにした。

最初に試したのはChatGPT(GPT-4)。次に、飲食業向けと謳われているいくつかのAIツールも触ってみた。結論から言うと、専門特化ツールよりChatGPTのほうが圧倒的に使いやすかった。理由は3つ。

まず、会話の自由度が高い。「やっぱりこっちの方向で」「さっきの案をベースに少し変えて」という修正指示が自然にできる。専門ツールはフォームに入力する形式が多く、途中で方針を変えにくかった。

次に、原価計算と文章生成が一つのツールで完結する。数字の計算も、POPの文章も、SNS投稿文も、全部ChatGPTに頼める。ツールを使い分ける必要がない。

最後に、コストパフォーマンス。ChatGPT Plusは月3,000円弱(当時)。専門ツールの多くは月1万円以上だった。小さなカフェには痛い出費だ。


実際に使ったプロンプトを全部公開する

ここからが本題だ。昨年の秋メニュー開発で実際に使ったプロンプトを、そのまま公開する。

ステップ1:食材コストを入力してメニュー案を出させる

最初に入力したプロンプトはこれだ。

私は鎌倉で席数14席の小さなカフェを経営しています。秋の新メニューを5品開発したいと考えています。以下の条件でメニューを提案してください。

【目標原価率】30%以下
【販売価格帯】800円〜1,400円
【使いたい食材と仕入れコスト】
・さつまいも(鳴門金時):100gあたり90円
・栗(国産):100gあたり220円
・かぼちゃ(北海道産):100gあたり55円
・生クリーム:100mlあたり160円
・エスプレッソ用コーヒー豆:1ショット(7g)あたり60円
・ほうじ茶:1杯分あたり30円
・和三盆:100gあたり180円

【カフェの雰囲気】古民家をリノベーション。観光客と地元客が半々。インスタ映えするビジュアルも重視。

各メニューについて、①メニュー名、②主な材料と使用量、③概算原価、④推奨販売価格、⑤原価率、⑥ビジュアルの特徴、を表形式で出してください。

返ってきた回答は、正直驚いた。5品のメニュー案が表形式で整理されており、それぞれの原価率が計算されていた。私が思いつかなかった「ほうじ茶ラテ with 和三盆クリーム」という組み合わせも含まれていた。

ただし、最初の回答には問題もあった。「栗のモンブランパフェ」の原価計算が甘く、実際に計算し直すと原価率が40%を超えることが判明。ChatGPTの計算は目安として使い、最終確認は自分でやる必要がある、という教訓を得た。

ステップ2:原価率の高いメニューを修正させる

問題のあったメニューには、こうフォローアップした。

「栗のモンブランパフェ」について、実際に計算したところ原価率が42%になりました。原価率30%以下に抑えるために、以下の方向で修正案を3パターン提案してください。
①使用する栗の量を減らして他の食材で補う
②販売価格を上げる(上限1,600円)
③メニュー自体を別のものに変える
それぞれのパターンで、原価率と予想される客単価への影響も教えてください。

この修正プロセスが非常に有効だった。ChatGPTは「栗の使用量を60gから40gに減らし、マスカルポーネクリームの比率を上げることで原価率を34%に抑えられる」という案と、「販売価格を1,200円から1,500円に変更すれば原価率は28%になる」という案を提示してくれた。

最終的に採用したのは価格引き上げ案。試作品をスタッフに食べてもらったところ、「これ1,500円でも全然いける」という声が多く、実際に出してみたら売れ行きも好調だった。

ステップ3:競合との価格比較を加味した最終価格設定

鎌倉の観光エリアにある競合カフェの価格帯を参考に(ドリンク700〜1,200円、フード1,000〜1,800円)、以下のメニューの最終価格を設定してください。原価率30%以下を維持しつつ、「安すぎず高すぎず、価値を感じてもらえる価格」を意識してください。

・さつまいもラテ(原価:約210円)
・ほうじ茶ラテ with 和三盆クリーム(原価:約180円)
・かぼちゃのポタージュ(原価:約230円)
・栗のモンブランパフェ(原価:約420円)
・さつまいもとほうじ茶のセット(原価:約380円)

心理的価格設定(○○0円より○○80円のほうが安く感じるなど)も考慮してください。

この回答で特に参考になったのが「心理的価格」の指摘だ。ChatGPTは「1,000円より980円、1,500円より1,480円のほうが購買心理的に有効だが、高級感を出したい場合はきりのいい数字のほうが良い場合もある」と説明し、カフェの雰囲気(古民家リノベーション)を踏まえて「1,200円、1,400円などのきりのいい価格帯が雰囲気と合っている」と提案してくれた。

ステップ4:メニュー説明文とSNS投稿文の生成

価格設定が固まったら、次はPOP用の説明文とSNS投稿文だ。

「さつまいもラテ」のメニュー説明文を3パターン作成してください。
・使用食材:鳴門金時(徳島産)、エスプレッソ、スチームミルク
・価格:980円
・ターゲット:観光で鎌倉を訪れた20〜40代女性、地元の常連客
・文字数:各40〜60文字程度
・トーン:温かみがあり、素材へのこだわりが伝わる言葉遣い

合わせて、Instagramの投稿文(ハッシュタグ込みで200〜250文字)も3パターン作成してください。

返ってきた説明文のうち、スタッフ全員が「これ!」と即決したのがこれだった。

「徳島・鳴門金時の自然な甘みを、丁寧に炊き上げてペーストに。濃厚エスプレッソとの出会いが、秋の午後をやさしく包みます。」

私が書いたら「さつまいもとコーヒーのラテです」くらいの説明文になっていたと思う。この差は大きい。


ぶつかった壁——AIを過信して失敗した話

うまくいったことばかり書いても嘘になる。実際にはいくつかの失敗があった。

失敗1:原価計算の数値を鵜呑みにした

前述したが、ChatGPTの原価計算は「概算」だ。最初の回答で「原価率28%」と出たメニューを、実際に試作して正確に計算したら34%だったことがある。食材の歩留まり(使える部分の割合)や、調理中のロスをAIは完璧には考慮できない。

特にかぼちゃは皮と種を除くと可食部が約70%になるのだが、ChatGPTは最初「100g使用」と計算していた。実際には「可食部100gを得るためには約143g仕入れる必要がある」という計算が必要で、これを指摘するまで気づかなかった。

対策として、AIの出した原価計算は「叩き台」として使い、最終確認は必ず自分でExcelで計算するというルールにした。

失敗2:「映えるメニュー」の提案を全部採用しようとした

ChatGPTが提案してくれたメニューの中に、見た目が非常に華やかな「秋のパフェ盛り合わせ」があった。インスタ映えしそうだし、価格も高めに設定できると思って試作してみたのだが、盛り付けに1品あたり12分かかることが判明。14席のカフェで、ランチタイムに注文が重なったら完全にキャパオーバーになる。

AIはオペレーションの現実を知らない。「作業時間」「スタッフのスキル」「ピーク時の注文集中」といった現場の制約は、こちらから情報を与えないと考慮してくれない。

この失敗以降、プロンプトに「盛り付け時間は5分以内」「スタッフ1人でも対応できる工程」という条件を必ず入れるようにした。

失敗3:SNS文章の「AI臭さ」に気づかなかった

最初に生成したInstagram投稿文をそのまま使ったところ、常連のお客様から「なんか文章変わった?」と言われた。よく見ると、確かに私の普段の言葉遣いと違う。「〜をお楽しみください」「〜が絶妙にマッチ」といった表現が、私のアカウントのトーンと微妙にずれていた。

対策として、プロンプトに「以下の過去投稿文の文体・トーンに合わせて作成してください」と書いて、自分の過去のInstagram投稿を3〜5件コピペするようにした。これで格段に自分らしい文章が出るようになった。


失敗を乗り越えた改善プロセス

上記の失敗を経て、プロンプトの精度を上げていった。最終的に安定して使えるようになったプロンプトのポイントをまとめる。

原価計算プロンプトの改善版

以下の食材を使ったメニューの原価を計算してください。計算の際は以下を考慮してください。
・野菜類は歩留まり70%で計算(皮・種・へたを除いた可食部)
・生クリームは泡立て時に10%増量を考慮
・コーヒーは抽出後の液量で計算(豆7gで30mlのエスプレッソ)
・盛り付け時のロス5%を加算
・容器・ストロー等の消耗品コストとして1品あたり25円を加算

この条件を加えることで、実際の原価との誤差が大幅に減った。最初は±15%くらいあった誤差が、±5%以内に収まるようになった。

オペレーション制約を加えたメニュー提案プロンプト

メニュー提案の際は以下の制約条件を守ってください。
・盛り付け・仕上げ作業は5分以内
・調理経験1年未満のスタッフでも対応可能な工程
・使用する食材の種類は既存メニューと重複させる(食材の使い回しで廃棄ロス削減)
・冷蔵保存で3日以内に使い切れる量で仕込める

特に「既存メニューと食材を重複させる」という条件は非常に効果的だった。例えば、さつまいもを使うラテを作れば、同じさつまいもを使ったケーキもメニューに入れることができる。一種類の食材を複数メニューで使い回すことで、廃棄ロスが大幅に減った。これだけで月に約3万円のコスト削減になった。


最終的な成果——数字で見る8%改善の内訳

昨年秋冬メニューの結果を、具体的な数字で振り返る。

原価率の変化

  • 夏メニュー(AI導入前):平均原価率 38.2%
  • 秋冬メニュー(AI導入後):平均原価率 30.1%
  • 改善幅:8.1ポイント

月次の利益への影響

月商が約150万円で変わらないとすると、原価率8%の改善は月12万円の利益増加を意味する。年間換算で144万円。小さなカフェにとって、これは非常に大きな数字だ。

メニュー開発にかかった時間の変化

  • AI導入前:1回の季節メニュー入れ替えに約45時間
  • AI導入後:同じ作業が約15時間(試作・確認時間を含む)
  • 削減時間:約30時間

この30時間を何に使ったかというと、主にお客様との会話と、SNSの写真撮影に使った。結果として、Instagramのフォロワーが秋の3ヶ月で約800人増加した。

廃棄ロスの削減

食材の使い回し設計をAIに手伝ってもらった結果、廃棄ロスが前年比で約35%減少した。具体的には、さつまいもをラテ・ケーキ・スープの3メニューで使い回す設計にしたことで、1週間に購入するさつまいもの量を管理しやすくなった。


今もやり続けていること——AIを「経営の相談相手」として使う

現在は、メニュー開発以外にもChatGPTを活用している。

仕入れ交渉の準備:「この食材の代替品で、品質を落とさずに原価を下げる方法を教えてください」という相談を定期的にしている。最近では、輸入バニラビーンズの高騰に対して「バニラエッセンスとバニラペーストの組み合わせで同等の風味を出す比率」を教えてもらい、原価を1品あたり40円削減できた。

メニューの売れ行き分析:「以下の売上データを見て、廃止すべきメニューと強化すべきメニューを判断してください」と月次データを入力して分析を依頼している。自分では気づかなかった「雨の日はホットドリンクの注文が30%増える」という傾向を指摘してもらい、雨の日限定サービスを始めた。

スタッフへの説明資料作成:新メニューの食材の特徴や、お客様への説明トークスクリプトもAIで作成している。「このメニューをお客様に説明する際の、30秒のトーク例を3パターン作ってください」という使い方だ。


これからAIでメニュー開発を試みる人へ

最後に、同じようにカフェや飲食店を経営している方へ、正直なアドバイスを書いておきたい。

AIはあなたの代わりにメニューを「発明」してくれるわけではない。あなたが持っている食材情報、価格情報、お店の雰囲気、お客様の層——そういった情報を丁寧に入力すれば、それを元に整理・計算・提案してくれる「優秀なアシスタント」だ。

プロンプトの質が、そのまま出力の質になる。最初は雑なプロンプトで試して、「なんか違う」と感じたら条件を追加していく。この繰り返しで、3〜4回試作すれば自分のお店に合ったプロンプトのテンプレートができあがる。

そして、AIの提案は必ず現場で検証すること。原価計算は自分で確認し、試作は実際にやり、スタッフに食べてもらう。AIが出した答えは「仮説」であり、それを「正解」にするのはあくまで現場の人間だ。

私が一番驚いたのは、原価率の改善よりも「自分が思いつかなかったメニューのアイデアをもらえた」ことかもしれない。さつまいもとエスプレッソの組み合わせ、ほうじ茶と和三盆のクリーム——どちらも私一人では思いつかなかった。AIは「私の思考の外側」にあるアイデアを持ってきてくれる。それが、一番の価値だと思っている。

月3,000円弱のChatGPT Plusが、年間144万円の利益改善につながった。費用対効果という意味では、今まで試した中で最も優れた「投資」だった。

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