食品卸の営業担当がChatGPTで得意先向け提案資料を週6時間から25分に作成:新規契約件数が四半期で2.1倍に

食品卸の営業担当がChatGPTで得意先向け提案資料を週6時間から25分に作成:新規契約件数が四半期で2.1倍に
「また今週も土曜出勤か…」
そんなため息をついていた私が、今では定時に退社しながら、かつての2倍以上の新規契約を取れるようになりました。食品卸の営業担当として12年。スーパーや飲食店、給食センターなど、得意先ごとに「オリジナルの提案資料」を作ることが暗黙のルールでした。Excelで売上データを整理して、Wordで文章を書いて、PowerPointに貼り付けて……毎週この作業に6時間以上費やしていたんです。
「もっと多くのお客さんを回りたい」「新規開拓の時間が全然取れない」という悩みを抱えている食品卸の営業マンは、私だけじゃないはずです。この記事では、ChatGPTを使って提案資料の作成時間を週6時間から25分に短縮し、四半期の新規契約件数を2.1倍にした、私の実践的な取り組みをまるごと公開します。
なぜChatGPTを使い始めたのか:限界を感じた日々
私は東海地方の中堅食品卸売会社に勤める、山田健一(45歳)と申します。担当エリアは愛知県西部で、スーパー12社、飲食チェーン8社、給食・福祉施設15社の合計35社を一人で担当しています。
転機は2025年の秋でした。当時の上司から「来期は新規開拓件数を1.5倍にしろ」という目標を言い渡されたのです。既存客の対応だけでもパツパツなのに、正直「どうやって?」という気持ちしかありませんでした。
提案資料の作成がとくに時間の泥沼でした。たとえばスーパーA社向けであれば、季節商品のトレンドデータ、競合他社との価格比較、過去の購買履歴から見た推奨品リスト、納品スケジュールの提案……これを一から書き起こすと、どんなに慣れていても3〜4時間かかります。週に複数社分用意しようとすると、平気で週6時間、繁忙期は8時間近くが「資料作成」だけで消えていきました。
そんな状況で同僚に教えてもらったのがChatGPTでした。「プロンプトをうまく書けば資料の下書きを作ってくれる」という話を半信半疑で聞き、まず自分でお試しで使ってみたのが2025年10月のこと。最初は「なんか文章が固いな」と感じましたが、プロンプトを工夫するうちに、みるみる実用的になっていきました。
具体的な取り組み:ChatGPTをどう使ったか
全体のワークフローを整理する
最初にやったのは「資料作成のどこで時間がかかっているか」を分解することでした。付箋に書き出してみると、大きく4つのフェーズに分かれていました。
- 得意先ごとの情報収集・整理(約1.5時間)
- 提案の切り口・構成を考える(約1時間)
- 文章の下書き・清書(約2時間)
- 数値の入力・レイアウト調整(約1.5時間)
このうちChatGPTで代替できるのは②と③、部分的に①と④も効率化できると気づきました。いきなり全部を自動化しようとせず、「まず②と③だけChatGPTにやってもらう」という方針で進めることにしました。
実際に使ったプロンプト集
以下が、私が実際に使っているプロンプトのコアパターンです。試行錯誤を繰り返して、今はこの5パターンがメインになっています。
プロンプト①:提案の切り口を考えてもらう
あなたは食品卸売業の熟練営業担当です。以下の情報をもとに、得意先への提案の切り口を5つ考えてください。
【得意先情報】業態:地域密着型スーパー(店舗数3店)、客層:主婦層・高齢者中心、最近の課題:惣菜コーナーの売上が前年比-8%、競合:大手チェーンが近隣に出店予定
【提案したい商材】冷凍惣菜新ライン(調理済み・簡便性高い)、価格帯:100〜300円台
提案の切り口は「お客様の課題解決」を軸にして、説得力のある順番で並べてください。また、各切り口に対してトーキングポイントも1〜2行で添えてください。
プロンプト②:提案書の本文を書いてもらう
以下の条件で、食品卸の営業担当が得意先のバイヤー向けに送る提案書の本文を書いてください。
【条件】文体:丁寧かつ読みやすいビジネス文(箇条書きを多用)、文字数:500字程度、トーン:押しつけがましくなく、相手の利益を主語にする
【提案内容】夏季限定冷凍デザート(かき氷・アイス系)の新規取り扱い提案。主な訴求ポイントは①粗利率25%以上確保②小ロット対応(1ケース12個〜)③SNSで話題の映えるパッケージ
【相手情報】飲食チェーン(カフェ系・12店舗)、仕入れ担当者名:田中様、現在の課題:夏季の客単価向上
プロンプト③:売上データから提案ストーリーを作る
以下の売上データをもとに、得意先への提案に使えるストーリーを作ってください。データの羅列ではなく、「だからこの提案が有効だ」という流れが自然につながるよう、営業担当の語り口調でまとめてください。
【データ】・前期の納品実績:冷凍食品カテゴリ前年比+18%・当社推奨商品Aの取り扱い開始後、当該カテゴリ売上+23%・競合他社が同カテゴリの新商品を来月投入予定・今期推奨商品B(商品Aの上位版)の他エリアでの導入実績:平均+31%
プロンプト④:季節・トレンドの訴求文を作る
2026年の夏に向けた食品卸の提案資料に使える「季節トレンドの訴求文」を書いてください。以下のキーワードを必ず含め、バイヤーが「これは仕入れたい」と思えるような具体性のある文章にしてください。
【キーワード】健康志向、時短・簡便、インバウンド需要回復、冷凍技術の進化
【対象読者】スーパーの食品部門バイヤー(40〜50代男性想定)
文字数:200〜300字、文体:簡潔かつ説得力ある文章
プロンプト⑤:Q&A・想定反論への回答集を作る
食品卸の営業担当が得意先に冷凍食品の新規取り扱いを提案した際に、相手から返ってきそうな反論・懸念を5つ挙げ、それぞれに対する説得力のある回答を作成してください。
【提案商品】国産野菜使用の冷凍惣菜(価格帯:業務用1ケース3,000〜4,500円)
【想定される反論の方向性】在庫リスク、価格の高さ、既存商品との差別化、消費者への訴求力、納品リードタイム
回答は現場の営業担当らしい、自然な口語調でお願いします。
実際の作業フローはこうなった
プロンプトを整備した後、実際の作業フローはこのように変わりました。
- 事前準備(5分):得意先の基本情報(業態・担当者名・直近の課題・提案商材)をメモにまとめる
- 提案の切り口をChatGPTに出させる(3分):プロンプト①を使う。出てきた5案から2〜3案に絞る
- 本文の下書きをChatGPTに作らせる(5分):プロンプト②を使い、選んだ切り口に合わせてカスタマイズしてリクエスト
- 数値・データを自分で挿入(7分):ChatGPTが作った文章に、社内システムから引っ張った実際の納品実績数値を入れる。ここだけは人間の作業
- PowerPointへ貼り付け・最終確認(5分):既存のテンプレートに流し込んで完成
合計でだいたい25分。慣れてきた今は、複雑な案件でも30分を超えることはほぼなくなりました。
テンプレートの整備も鍵だった
ChatGPTだけでなく、PowerPointの提案書テンプレートを業態別(スーパー用・飲食チェーン用・給食施設用)に3種類作ったことも大きかったです。テンプレートがあれば、ChatGPTで作った文章を「どこに入れるか」が一目でわかります。逆にテンプレートがないと、せっかくAIで文章を作っても「貼り付け先を探す」「レイアウトを考える」という作業がまた発生してしまいます。
失敗談と改善:最初はうまくいかなかった
失敗①:AIの出力をそのまま送ったら「なんか違う」と言われた
最初の1ヶ月は、ChatGPTが出した文章をほぼノー編集で提案書に使っていました。文章としては整っているんですが、得意先の田中さんから「なんか今回の資料、いつもと雰囲気違うね」と言われてしまいました。よく読み返すと、確かに私の言葉じゃない。「貴社の更なる発展に寄与できれば幸いです」みたいな、私が絶対使わないような表現が混じっていたんです。
改善策:プロンプトに「文体の指定」を追加しました。「語尾は〜です・〜ます調で、かつ山田という営業担当が普段話す口調で書いてください」という一文を加えるだけで、だいぶ自然になりました。さらに、最終確認の際に「私なら言わない表現」を3〜5か所手直しするルーティンを設けました。この手直し時間は5分以内と決めており、「完璧主義にならない」ことが大事です。
失敗②:数値を捏造された
これは本当に焦りました。「競合他社との価格比較を含めて提案書を書いて」とChatGPTに頼んだら、もっともらしい価格データをでっち上げて文章の中に入れてきたんです。幸い、提出前に上司が気づいて差し戻しになりましたが、もし得意先に送っていたら信頼を完全に失っていました。
改善策:数値・データ類はすべて「自分で入力する箇所」として、ChatGPTには絶対に任せないというルールを徹底しました。プロンプトにも「数値や統計データは【●●】という形で空欄にしてください」と明示するようにしました。ChatGPTは文章の構成と言葉のプロとして使い、数字は人間が責任を持つ、という役割分担を明確にしたことで、このミスは完全になくなりました。
失敗③:プロンプトが長くなりすぎて逆に使いにくくなった
「より良い出力を得よう」とプロンプトに情報を詰め込みすぎた時期がありました。1プロンプトに500字以上の情報を入れていたこともあります。すると今度はChatGPTの出力がゴチャゴチャになり、「何を言いたい提案書なのか」がぼやける事態に。
改善策:「1プロンプト・1目的」の原則を設けました。提案の切り口を聞く、本文を書かせる、Q&Aを作る……これを別々のプロンプトに分割したのです。少し手間は増えますが、各プロンプトがシンプルになった分、出力の精度が格段に上がりました。今では各プロンプトの文字数は150〜250字を目安にしています。
失敗④:季節感がズレた提案を作ってしまった
ChatGPTのトレーニングデータのカットオフの関係で、「最新の食品トレンド」として出てきた情報が1〜2年前のものだったことがありました。「健康志向の流行」として挙げられた商品がすでに市場から撤退していたり、流行が落ち着いていたりしていたのです。
改善策:トレンド情報は食品業界の専門誌(日本食糧新聞、食品商業など)や農林水産省の統計データを自分で確認し、ChatGPTへのインプットとして与えるスタイルに変えました。「最新情報を教えて」ではなく「この情報をもとに提案文を書いて」という使い方です。これによって情報の鮮度は自分が担保し、文章の品質はAIが担保する、というベストな分担ができました。
成果・数値:数字で振り返るBefore/After
取り組みを始めてから約半年(2025年10月〜2026年3月)の成果を整理しました。
指標 | 導入前(2025年7〜9月) | 導入後(2026年1〜3月) | 変化 |
|---|---|---|---|
提案資料作成時間(週) | 約6時間 | 約50分(25分×2件) | ▲87%削減 |
週あたりの提案書作成件数 | 平均1.5件 | 平均5.2件 | +3.5倍 |
新規訪問件数(月) | 平均3.2件 | 平均8.7件 | +172% |
新規契約件数(四半期) | 7件(2025年Q2) | 14.7件(2026年Q1) | +2.1倍 |
残業時間(月) | 平均28時間 | 平均9時間 | ▲68%削減 |
提案書に対する得意先の返答率 | 約32% | 約51% | +19ポイント |
注目してほしいのは、単に時間が減っただけでなく、提案書に対する得意先の返答率(「検討します」「詳しく聞かせて」という反応)も上がっていることです。これはなぜかというと、「時間があるから提案の質を上げる余裕ができた」から。以前は時間に追われて「とりあえず出す」資料だったものが、ChatGPTを使うことで提案の切り口を複数検討し、より相手に刺さる訴求を選べるようになりました。
また、得意先ごとに「最もよく使ってもらえた提案パターン」も蓄積されてきて、2回目以降の提案精度がさらに上がっています。ChatGPTの活用は「手間を減らす」だけでなく、「提案の質を上げる」という副産物をもたらしてくれました。
応用・発展:さらにこんな使い方も試しています
商談後の議事録・アクションリスト作成
得意先との商談が終わった直後、スマホのボイスメモに「今日の商談で話したこと」を2〜3分で口頭録音します。これをテキスト化してChatGPTに投げると、「議事録」と「次回アクションリスト」を自動で作ってくれます。これで商談後の事務作業がさらに20分ほど削減できました。
メールの文章生成
フォローアップメールもChatGPTに下書きを作らせています。「先日の商談での相手の懸念事項」「次のアクション」を箇条書きで渡すと、丁寧なメール文を30秒で生成してくれます。返信率が上がったかどうかはまだ計測中ですが、体感では明らかに反応が良くなっています。
新商品の説明文・POPコピー作成支援
得意先のスーパーから「この商品のPOP文をサポートしてほしい」と頼まれることがあります。以前は「それは得意先の仕事では……」と半ば断っていましたが、今ではChatGPTを使って5分でPOP文の案を3〜4パターン作って提供できるようになりました。「気が利く業者」というポジションができ、関係強化につながっています。
競合分析レポートの叩き台作成
「競合他社がどんな提案をしているか」という情報を自分なりにまとめた上でChatGPTに渡し、「自社の強みをどう打ち出すか」という分析レポートの叩き台を作らせる試みも始めました。まだ試行段階ですが、上司への報告書作成にも使えそうな手応えを感じています。
チーム展開で組織全体の底上げを狙う
現在、私が作ったプロンプト集を社内で共有する準備を進めています。同じ部署の営業担当6名に展開できれば、チーム全体で月100時間以上の時間創出が見込めます。上司には「プロンプト集の整備に1週間だけ時間をください」とすでに打診済みで、2026年夏には部門展開を予定しています。
まとめ:最初の一歩は「小さく試すこと」から
この記事を読んでいるあなたも、「AIって難しそう」「自分には使いこなせない」と思っているかもしれません。正直、私も最初はそうでした。でも、実際にやってみると、ChatGPTは「すごい便利な新人スタッフ」みたいなものです。指示が的確なら期待以上の仕事をするし、指示があいまいならあいまいなりの結果が返ってくる。それだけのことです。
大事なのは「全部AIに任せよう」と思わないことと、「数値はかならず自分で確認する」というシンプルなルールを守ること。この2点さえ押さえれば、大きなリスクなく使い始めることができます。
まずは今週、1件だけ提案書の本文をChatGPTに下書きさせてみてください。この記事で紹介したプロンプトをコピーして使ってもらって構いません。最初の1回が一番ハードルが高く感じられますが、やってみると「あ、これだけで使える」という感覚が必ずあります。
時間を取り戻すことは、お客さんにもっと向き合う時間を作ること。営業の本質は「人と会うこと」であり、ChatGPTはそのための時間を私に返してくれました。ぜひあなたの現場でも、その感覚を体験してほしいと思います。
※この記事は実践AI(jissen.ai)の専属ライターが取材・執筆しました。登場人物の一部は個人特定を避けるため仮名を使用しています。2026年6月現在の情報をもとにしています。