建設会社の現場監督がChatGPTで安全書類作成を90%自動化、書類対応時間を月25時間短縮した事例

建設会社の現場監督がChatGPTで安全書類作成を90%自動化、書類対応時間を月25時間短縮した事例
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建設会社の現場監督がChatGPTで安全書類作成を90%自動化、書類対応時間を月25時間短縮した事例

「また書類か…」現場監督を蝕む"見えない残業"

毎朝5時半に現場入りして、職人さんたちの安全を確認する。昼間は工程管理と職人さんへの指示対応でバタバタ。そして夜になってようやく事務所に戻ってから始まるのが、書類仕事だ。

私が勤める中堅建設会社(従業員数120名)では、現場ごとに安全書類の提出が義務付けられている。新規入場者教育記録、危険予知(KY)活動記録、安全施工サイクル報告、作業手順書、ヒヤリハット報告書——挙げればキリがない。しかもこれらは元請けや施主によってフォーマットが微妙に違う。「ここの会社はWordで、こっちはExcelで、あそこはPDFに手書きで…」という状況が当たり前だった。

現場監督を10年やってきた私、田中雄介(42歳)がChatGPTに出会い、この"見えない残業"を劇的に減らすことができた話を、できる限り具体的にお伝えしたい。

なぜAIを導入しようと思ったのか

限界を感じた、あの夜

転機は2025年の秋だった。その頃、私は同時に3現場を掛け持ちしていた。住宅新築、マンションリフォーム、そして商業施設の外壁改修。規模は違えど、それぞれで安全書類の提出が求められる。

ある水曜の夜11時、事務所でひとり作業手順書を打ち込んでいたとき、ふと気づいた。「この文章、先月も似たようなの書いたな」。高所作業の手順書、墜落防止の注意事項、電動工具の使用ルール——毎回ほぼ同じ内容なのに、一から打ち込んでいる自分がいた。月に換算すると、安全書類の作成だけで25〜30時間は使っていた計算になる。

そんなとき、同業他社の先輩監督から「ChatGPT使ってみたか?書類仕事がだいぶ楽になるぞ」と一言もらった。正直、「AIなんて自分には関係ない」と思っていたタイプだ。でも背に腹は代えられない。その夜、帰り道にスマホでChatGPTに登録した。

最初は無料版(GPT-3.5)を試したが、すぐにChatGPT Plus(月額約3,000円)に課金した。理由は単純で、出力の質が段違いだったからだ。投資対効果を考えれば、月25時間の削減に対して3,000円は安すぎる。

具体的な取り組み:実際にどうやって使ったか

ステップ1:まず「自分の情報をAIに覚えさせる」ことから始めた

最初にやったことは、ChatGPTに自分の現場情報を整理して入力することだった。毎回「この工事はどんな工事で、どんな職種が入っていて…」と説明するのは面倒なので、「システムプロンプト」(カスタム指示)に定型情報を登録した。

ChatGPTの「カスタム指示」機能に以下のような内容を設定した:

【カスタム指示の設定内容(抜粋)】

私は建設会社の現場監督です。主に住宅・マンション・商業施設の新築・改修工事を担当しています。書類作成では以下の点を守ってください:①建設業界の専門用語を正確に使う、②安全関連の法令(労働安全衛生法、建設業法)に準拠した表現にする、③文章は現場で実際に使える平易な日本語にする、④箇条書きを積極的に使い、見やすくする。

これだけで、出力される文章のトーンと専門性が格段に上がった。

ステップ2:安全書類の種類ごとにプロンプトを整備する

次に、よく作る安全書類の種類をリストアップした。私の場合、特に時間がかかっていたのは以下の5種類だった。

  • 作業手順書(1枚あたり平均45分 → AIで5分に短縮)
  • KY活動記録(1回あたり平均20分 → AIで3分に短縮)
  • 新規入場者教育テキスト(1現場あたり平均3時間 → AIで20分に短縮)
  • ヒヤリハット報告書(1件あたり平均30分 → AIで5分に短縮)
  • 安全施工サイクル月報(月1回、平均2時間 → AIで15分に短縮)

それぞれに対してプロンプトのテンプレートを作り、Notionに保管した。書類作成が必要になったら、Notionからプロンプトをコピーして、現場固有の情報(作業名、使用機材、作業員の職種など)を穴埋めしてChatGPTに貼り付けるだけ。

実際に使ったプロンプト例

【プロンプト例①】作業手順書の作成

以下の条件で、建設現場用の作業手順書を作成してください。

【工事概要】マンション外壁塗装改修工事(東京都内、地上8階建て)

【作業内容】高所作業車を使用した外壁下地処理(ケレン作業)

【使用機材】高所作業車(最大地上高12m)、電動グラインダー、保護メガネ、安全帯

【作業員】左官職人2名、作業指揮者1名

出力形式:①作業前確認事項、②作業手順(番号付き)、③危険源と対策、④緊急時の対応手順。A4用紙1枚に収まる分量で、現場の職人が読んで理解できる平易な言葉で書いてください。

【プロンプト例②】KY活動記録の雛形生成

今日の作業内容に基づいて、KY(危険予知)活動記録の雛形を作成してください。

【今日の主な作業】鉄筋コンクリート造3階建て住宅の基礎配筋工事

【作業員構成】鉄筋工3名、現場監督1名

【天候・環境条件】晴れ、気温32度(熱中症警戒アラート発令中)

危険のポイントを4項目、それぞれに対する行動目標(ワンポイント指示)を1文ずつ出してください。最後に今日の安全重点実施事項を1つ、10文字以内でまとめてください。

【プロンプト例③】ヒヤリハット報告書の文章生成

以下のメモをもとに、ヒヤリハット報告書の本文を作成してください。

【発生日時】2026年6月10日 午前10時頃

【発生場所】2階外部足場上

【状況メモ】職人が資材を持ったまま昇降中、足場の踏み板端部で足が滑りかけた。転落はなし。安全帯は装着していたが、フックをかけていなかった。

以下の構成で報告書を書いてください:①発生状況(100文字程度)、②直接原因、③根本原因、④再発防止策(具体的な対策を3つ)、⑤水平展開すべき注意点。建設業の安全管理書類として適切な表現を使ってください。

【プロンプト例④】新規入場者教育テキストの作成

新規入場者向けの安全教育テキストを作成してください。

【現場概要】木造2階建て住宅新築工事(敷地面積180㎡)

【主な危険作業】屋根工事(傾斜屋根)、電動工具使用、資材搬入時の重量物取り扱い

【対象者】この現場初入場の大工職人(経験5年以上)

【所要時間】15分程度で読み終わる分量

必ず含める項目:①この現場のルール(服装・保護具)、②緊急時の連絡先と避難経路、③現場固有のNG行動リスト、④熱中症予防のポイント。見出しと箇条書きを使って見やすくしてください。

【プロンプト例⑤】月次安全施工サイクル報告書の下書き

6月の安全施工サイクル月報の下書きを作成してください。

【現場名】○○マンション新築工事

【当月の主な工種】型枠工事、鉄筋工事、コンクリート打設

【当月の安全活動実績】KY活動実施22回、安全朝礼実施22回、安全パトロール実施4回、ヒヤリハット報告2件、安全教育実施2回(延べ参加人数18名)

【特記事項】熱中症予防対策として冷感ミスト設置、水分補給タイムを1日3回設定

所見・評価・翌月の重点実施事項を含め、A4半ページ程度の文量でまとめてください。元請けに提出できる丁寧な文体にしてください。

ステップ3:出力された文章を「素材」として使う

重要なのは、ChatGPTの出力をそのまま使わないことだ。AIが出した文章は「たたき台」として扱い、必ず自分の目で確認・修正する。確認ポイントは主に3つ:①法令の引用が最新か(労働安全衛生法の条文番号など)、②現場の実態と合っているか、③会社独自のルールが反映されているか。

この確認・修正作業も含めて、従来の45分かかっていた作業手順書が今では10〜15分で完成する。それでも75%以上の時間削減だ。

失敗談と改善:うまくいかなかったこととその解決策

失敗①:最初は「ふわっとした指示」で使い物にならなかった

導入当初、私はこんなプロンプトを打ち込んでいた。「高所作業の手順書を作って」。返ってきた文章は確かに"それっぽい"のだが、汎用的すぎて実際の現場では使えなかった。作業車の種類も書いてない、作業員の職種も反映されていない、うちの会社のルールも無視——全部書き直しになって、かえって時間がかかった。

改善策:「5W1H+出力形式の指定」を徹底することにした。いつ・どこで・誰が・何を・どのように・なぜ、そして「A4一枚で」「箇条書きで」「〇〇文字程度で」という出力形式を必ず指定する。これだけで出力の実用度が劇的に上がった。今ではプロンプトのテンプレートに最初からこれらの項目を含めている。

失敗②:法令の条文番号を信用して恥をかいた

ある日、元請けに提出する安全計画書の中でChatGPTが生成した「労働安全衛生規則第518条」という引用をそのまま使った。提出後に元請けの安全担当者から「この条文番号、ちょっと確認しましたがこの内容じゃないですよ」と指摘されてしまった。いわゆるAIの「ハルシネーション(幻覚)」という現象で、それっぽい番号をでっち上げてしまうことがある。

改善策:法令の条文番号や具体的な数値(高さ何メートル以上は安全帯必須、など)は必ず国土交通省や厚生労働省の公式サイト、または手元の法令集で確認するルールにした。プロンプトにも「条文番号は書かなくていい、内容だけ書いて」と指示を加えた。AIは「考える道具」であって「法令データベース」ではないという認識が大事だと痛感した。

失敗③:職人さんに読んでもらえない文章になっていた

ChatGPTが生成する文章は、デフォルトだと少し"お役所文書っぽく"なりがちだ。「当該作業において墜落・転落防止措置を講じるとともに…」みたいな硬い表現で、読んだ職人さんから「なんか難しくてよくわからん」と言われた。教育テキストとして機能していなかったのだ。

改善策:プロンプトに「中学生でも理解できる言葉で書いてください」「できるだけ短い文で、1文に1つの内容だけ入れてください」と追記した。また生成後に「この文章を現場の職人(40代、工業高校卒業程度の文章読解力)向けにもっと平易に書き直してください」と続けてリライトを依頼するフローを加えた。これで読みやすさが大幅に改善した。

失敗④:スマホから入力するのが面倒で続かなかった時期があった

現場でその場でKY記録を作ろうとスマホからプロンプトを打ち込もうとしたが、長文入力がしんどすぎて「やっぱり手書きでいいや」と逆戻りした時期があった。

改善策:Notionのモバイルアプリにプロンプトテンプレートを保存しておき、変数部分(作業名・使用機材・作業員数など)だけをスマホで入力してコピー&ペーストするフローに変えた。入力時間が3分以内に収まるようになってから、現場での入力も習慣化できた。

成果・数値:Before/Afterの比較

ChatGPT活用から約8ヶ月が経った現在、数値で見ると以下のような変化があった。

書類の種類

導入前(平均時間)

導入後(平均時間)

削減率

月間作成件数

月間削減時間

作業手順書

45分/枚

10分/枚

78%削減

8枚

約4.7時間

KY活動記録

20分/回

3分/回

85%削減

22回

約6.2時間

新規入場者教育テキスト

180分/現場

20分/現場

89%削減

2現場分

約5.3時間

ヒヤリハット報告書

30分/件

5分/件

83%削減

4件

約1.7時間

安全施工サイクル月報

120分/回

15分/回

88%削減

3現場分

約5.3時間

合計

平均88%削減

約23.2時間/月

月間23〜25時間の削減というのは、数字だと実感しにくいかもしれない。でも私にとっては「毎週金曜の夜を家族と過ごせるようになった」ということだ。以前は月に1〜2回は深夜残業が発生していたが、今は21時には退社できる日がほとんどになった。

コスト面でも効果は明確だ。私の残業代を時給2,500円として計算すると、月25時間の削減は62,500円相当。ChatGPT Plusの月額3,000円に対して、約20倍のリターンになっている。会社側からも「他の現場監督にも使わせたい」という話が出てきており、今年中に部門全体への展開を検討中だ。

応用・発展:さらなる活用アイデア

今試しているもの・これから試したいもの

安全書類の自動化で成功体験を得てからは、他の業務にも応用を広げている。現在試しているのは以下の取り組みだ。

  • 施工記録の文章化:スマホで撮った写真の状況を箇条書きでメモし、それをChatGPTに渡して施工記録の文章を生成する。写真と文章の組み合わせで工事日誌の質が上がった。
  • 職人への作業指示書の多言語化:外国人技能実習生が増えてきた現場で、ChatGPTを使って作業指示書のやさしい日本語版・英語版・ベトナム語版を作成している。翻訳精度は完璧ではないが、ゼロから作るよりはるかに効率的。
  • 工程表の遅延影響シミュレーション:「〇〇工事が3日遅れた場合の後続工事への影響を整理して」とChatGPTに相談すると、リスクと対応策の検討が素早くできる。

今後挑戦したいのは、ChatGPTのAPIを使ったより自動化されたワークフローの構築だ。具体的には、スプレッドシートに作業情報を入力すると自動でKY活動記録のドラフトが生成されるような仕組みを、社内のIT担当者と一緒に作ってみたいと考えている。ノーコードツール(MakeやZapierなど)を使えば、プログラミング不要で実現できそうだという手応えを感じている。

また、過去のヒヤリハット報告書をChatGPTに読み込ませて「共通するリスク傾向を分析して」と依頼することも試してみた。「高所作業時の安全帯未装着が全体の40%を占める」といったパターン分析ができ、翌月の安全教育の重点テーマ設定に役立てることができた。

まとめ:難しく考えなくていい、まず1枚の書類から始めてみよう

この記事を読んでいる現場監督のみなさんに伝えたいのは、「AIは難しいものじゃない」ということだ。私も最初は「ITが得意な若い人向けのものだろう」と思っていた。でも実際に使ってみると、ChatGPTはただの"賢いテキスト入力ツール"だとわかった。紙に書く代わりに画面に打ち込む、それだけのことだ。

最初の一歩として、次に書類作成が発生したとき、まずChatGPTに「この作業の手順書を作って」と打ち込んでみてほしい。最初はうまくいかないかもしれない。でもそれは「指示の出し方」を学ぶ過程であって、失敗じゃない。

現場監督の仕事の本質は、人の命と安全を守ることだ。書類作成に追われて現場をろくに見られない状況は、本末転倒だと思っていた。ChatGPTのおかげで、私は今、現場を歩く時間が月25時間増えた。安全確認の質が上がり、職人さんとの会話が増えた。それが一番大きな成果だと感じている。

書類仕事はAIに任せて、現場に出よう。そのための道具は、もうあなたのスマホの中にある。


※本記事で紹介したプロンプト例は実際の使用例をもとにした参考情報です。ChatGPTの出力は必ず人間が確認・修正してから使用してください。法令に関わる内容は必ず公式情報で確認することをお勧めします。

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