個人経営の英会話スクールがCopilotで体験レッスン後のフォローメールを自動化:入会率が38%向上

「体験レッスン、来てくれたのにそのまま音信不通」——小さな英会話スクールが抱える、あの切ない悩み
体験レッスンが終わった後、「ありがとうございました!ぜひご検討ください」と笑顔でお見送りをする。そして翌日、パソコンを開いてフォローメールを書こうとする。でも、午前中はレッスンが3コマあって、昼は教材準備、夕方もレッスン……気づいたら3日経っていた。慌ててメールを送ると、もう返信は来なかった。
こんな経験、英会話スクールを一人でやっている方なら一度や二度ではないはずです。私もそうでした。
私、田中みどり(38歳)は東京・三軒茶屋で「Midori English Studio」を経営して7年になります。生徒数は常時30〜40名ほどの、いわゆる個人経営の小さなスクールです。体験レッスンには月に10〜15名ほどお越しいただくのですが、入会率がずっと低空飛行で悩んでいました。そのボトルネックが「フォローメールの遅れ」だったと気づいたのは、Microsoft Copilotを使い始めてからのことでした。
そもそもなぜフォローメールが遅れていたのか——背景と導入のきっかけ
体験レッスン後のフォローメールって、実は結構大変なんです。ただ「ありがとうございました」と送るだけじゃ意味がない。その方がレッスン中に話していた目標や悩み、好きな話題を思い出しながら、個人に合わせた内容を書く必要がある。それをやろうとすると、1通あたり20〜30分かかっていました。
月に12名来てくれたとして、12通×25分=300分、つまり5時間。一人経営だとこれが本当にきつい。しかも「完璧なメールを送りたい」というプレッシャーから先延ばしが続き、結局タイミングを逃すという悪循環でした。
転機は2025年の秋、同じ個人経営の塾の先生から「Copilotでメール下書きを作ってもらってる」という話を聞いたこと。私はMicrosoft 365をもともと使っていたので、Copilotは追加料金なしで使える環境にありました(Microsoft 365 PersonalまたはBusinessプランに含まれる形での利用)。「試すだけタダだし」という軽い気持ちで始めたのが、2025年10月のことです。
最初はOutlookのCopilot機能でメールの下書きを作る程度でしたが、徐々に使い方が洗練されていき、今では体験レッスンの当日中にパーソナライズされたフォローメールを送れる仕組みが整いました。その結果、入会率が38%向上するという、自分でも驚く成果が出たんです。
具体的な取り組み——ツールと手順、そして実際のプロンプト
使ったツールと全体の流れ
使用したのは以下のツールです:
- Microsoft Copilot(Outlook統合版):フォローメールの下書き作成
- Microsoft OneNote:体験レッスン中のメモ記録(スマホアプリで使用)
- Microsoft Forms:体験レッスン前のアンケート収集
- Outlook:メール送信・管理
全体の流れをざっくり説明すると、こうなります:
- 体験レッスン前日:Formsで事前アンケートを送付(英語を学ぶ目的、現在のレベル、不安なことなどを確認)
- 体験レッスン中:OneNoteに気になった発言やレスポンスをメモ
- レッスン終了後15分以内:OneNoteのメモをCopilotにコピー&ペーストしてメール下書きを依頼
- 下書きを5分で確認・微修正してそのまま送信
ポイントは「レッスン終了後15分以内」というルールを自分に課したこと。これを守るために、レッスンとレッスンの間に必ず20分のバッファタイムを設けるようスケジュールを組み直しました。
体験レッスン中のメモの取り方
Copilotに「パーソナライズされたメール」を書いてもらうには、それなりの情報を与える必要があります。私がOneNoteに記録する項目は以下の通りです:
- お名前・年齢層(20代後半、40代など)
- 英語を学ぶ主な目的(仕事・旅行・趣味など)
- レッスン中に盛り上がった話題
- 得意だったこと・苦手そうだったこと
- 本人が口にした不安や懸念事項
- 体験後の表情・雰囲気(楽しそうだった、緊張していたなど)
これをレッスン中にサラっとメモするのがコツ。完璧に書こうとしなくていい。箇条書きで5〜6行あれば十分です。
実際に使ったプロンプト集
以下が私が実際にCopilotに入力しているプロンプトです。そのまま使えるように共有します。
プロンプト①:基本のフォローメール下書き
あなたは小さな英会話スクール「Midori English Studio」のオーナー講師・田中みどりです。今日体験レッスンに来てくれた方へのフォローメールを書いてください。
【体験者の情報】
名前:〇〇さん(30代前半)
目的:来年のハワイ旅行で現地の人と話したい
盛り上がった話題:ハワイのレストランでの注文、ビーチでの会話
得意だった点:発音が意外ときれいだと本人も驚いていた
苦手そうだった点:とっさに言葉が出てこない(考えすぎる傾向)
体験後の雰囲気:楽しそうだったが、料金についてやや迷っている様子【メールの条件】
・温かみのある、押しつけがましくない文体で
・体験レッスンの具体的なシーンに触れる
・本人の強みを認める一言を入れる
・次のステップ(入会)への自然な誘導を最後に入れる
・文字数は400〜500文字程度
・件名も考えてください
プロンプト②:迷っている方への「背中を押す」バリエーション
上記のメールをベースに、料金に迷っている方向けに「入会へのハードルを下げる」バージョンも作ってください。具体的には、月謝の支払い方法の柔軟性や、まず3ヶ月試せることを自然に伝える内容にしてください。セールス感が強くならないよう注意してください。
プロンプト③:ビジネス英語目的の方向けカスタマイズ
体験者の情報を変えます。40代男性、外資系企業への転職が決まり、3ヶ月後から英語でのミーティングが始まる。レッスン中は緊張していたが、語彙は豊富。話すスピードと度胸が課題。体験後は「やっぱり必要だと思った」と前向きな発言あり。
この方へのフォローメールを書いてください。「3ヶ月後」という具体的な期限があることを意識して、今から始める理由を自然に盛り込んでください。
プロンプト④:子ども英語コース体験者の保護者向け
保護者(お母さん)向けのフォローメールを書いてください。体験に来たのは小学2年生の女の子。レッスン中ははじめ緊張していたが、後半はアルファベットソングで大笑いして楽しんでいた。お母さんは「英語嫌いにさせたくない」という気持ちが強い。メールは保護者に向けて、子どもの様子を具体的に伝えながら、「楽しく通える」という安心感を与える内容にしてください。
プロンプト⑤:1週間後のリマインドメール
体験レッスンから1週間経ってもご返信がない方へのフォローメールを書いてください。押しつけがましくなく、「もし何かご質問があれば」という軽いトーンで。ただし、「今月あと2名で定員」という事実を自然に添えてください。件名も含めてください。
Copilotの出力をどう使うか
Copilotが出してくれた下書きをそのまま送ることはほとんどありません。必ず「ひと手間」を加えます。具体的には:
- 固有名詞や具体的なエピソードの確認(Copilotが微妙に変えていることがある)
- 私らしい言い回しへの微調整(「〜ですね」「〜ですよ」などの語尾)
- 最初の一文だけ手書き感を出す(「今日はご来校ありがとうございました!」など)
この微調整込みで、1通あたり5〜7分で送れるようになりました。以前の25〜30分から大幅短縮です。
失敗談と改善——うまくいかなかった3つのこと
失敗①:情報が少なすぎて「どこでも使える無難なメール」になった
最初の2週間、私がやっていたのはほぼ「〇〇さん、旅行のために英語を学びたいとのことで、体験レッスンを受けていただきました」程度の情報を渡すことでした。当然、Copilotが出してくるのは汎用的な文章。「温かみがあるような感じはするけど、どこか他人行儀」という仕上がりで、実際に何名かに送ったら反応がほぼゼロでした。
改善策:OneNoteのメモテンプレートを作り、体験レッスン中に必ず6項目を埋めるようにしました。情報量が増えると、Copilotの出力が劇的にパーソナライズされるんです。「発音がきれいですよ」という一言が入っているだけで、返信率がまったく違った。
失敗②:プロンプトを毎回ゼロから書いていて時間がかかった
導入から3週間くらいは、プロンプトも毎回ほぼゼロから書いていました。「あれ、前回はどう書いたっけ」と探すだけで5分ロス。これでは効率化の意味が薄れてしまいます。
改善策:よく使うプロンプトのテンプレートをOneNoteに「プロンプト集」として保存。体験者の情報だけ書き換えて貼り付けるスタイルにしました。これで入力時間が1分以内に。さらにOutlookの「クイックパーツ」機能にも登録して、メール作成画面から直接呼び出せるようにしました。
失敗③:Copilotが「料金を記載」してしまったことがあった
あるとき、プロンプトに「今月あと2名で定員」という情報を入れた際、Copilotが気を利かせて「月謝は〇〇円で…」という内容を勝手に追加してきました。もちろん金額は架空の数字。もし確認せずに送っていたら大変なことになるところでした。
改善策:プロンプトの末尾に必ず「料金・金額については一切記載しないでください。具体的な数字は私が後で追記します」という制約を入れるようにしました。また、送信前のチェックリストを5項目作ってデスクに貼り、毎回確認するようにしています。AIを使う上でのヒューマンチェックは絶対に省いてはいけないと実感しました。
おまけの失敗:送信タイミングを自動化しようとして混乱した
「せっかくなら送信も自動化したい」とPower Automateを使って自動送信を試みました。でも設定が複雑で、テスト中に同じ方に同じメールが3通届いてしまうというトラブルが発生。謝りのメールを送る羽目になりました。それ以降、「下書きを作るのはCopilot、送信は私」という役割分担を徹底しています。完全自動化は魅力的ですが、個人対個人のやり取りが命の小さなスクールには向かないと判断しました。
成果・数値——Before/Afterで見る変化
Copilotを本格活用し始めてから約8ヶ月(2025年10月〜2026年6月)のデータをまとめました。
指標 | 導入前(2025年4〜9月平均) | 導入後(2025年10月〜2026年6月平均) | 変化 |
|---|---|---|---|
月間体験レッスン数 | 12名 | 13名 | ほぼ変わらず |
体験後の入会率 | 26%(約3名/月) | 36%(約4.7名/月) | +38%向上 |
フォローメール送信までの平均時間 | 体験後34時間(翌々日以降が多い) | 体験後1.2時間(当日内) | 97%短縮 |
1通あたりのメール作成時間 | 25〜30分 | 5〜7分 | 約80%削減 |
月間フォロー作業の合計時間 | 約5時間 | 約1.2時間 | 約76%削減 |
体験後メールへの返信率 | 約18% | 約41% | 2.3倍に増加 |
1週間以内の入会決定率 | 体験入会者の60% | 体験入会者の78% | 意思決定が早まった |
数字で見ると改めて驚きます。特に「フォローメール送信までの時間」が34時間から1.2時間になったことが、入会率向上に直接つながっていると感じています。体験直後は「楽しかった!」という感情がピークにある。そこに具体的な自分への言及があるメールが届くことで、「この先生はちゃんと私を見てくれている」という信頼感が生まれるんだと思います。
売上への影響も実感しています。月に1.7名増(3名→4.7名)、年間で約20名の入会増。月謝を仮に1万5000円として、単純計算で年間360万円の増収につながっています。Copilotの利用コストはMicrosoft 365の月額費用に含まれており、追加投資はほぼゼロでした。
応用・発展——さらにここまで広げられる
既存生徒へのモチベーションメールへの応用
フォローメールの仕組みが軌道に乗ったので、今は既存の生徒さんへの「進捗応援メール」にも活用しています。月に1度、その生徒さんが最近がんばっていること・できるようになったことをCopilotに渡して、励ましのメールを作ってもらう。これが意外と好評で、「こんなメール、英会話スクールで初めてもらいました」という声もいただきました。生徒の継続率にも良い影響が出そうな予感がしています。
体験レッスン前の「予習メール」にも活用
Formsで事前アンケートを回収したタイミングで、「この方はこんな目的で来る」という情報をCopilotに渡し、体験レッスン前日に送る「明日の準備メール」を作ってもらう試みも始めました。「明日は〇〇のシチュエーションで練習しましょう」という一文があるだけで、体験者の緊張がほぐれて当日のレッスンが盛り上がりやすくなりました。これも入会率に間接的につながっていると感じます。
SNS投稿文の生成にも横展開
フォローメールで培ったプロンプト力は、InstagramやLINE公式アカウントの投稿文作成にも転用できます。「今月の体験レッスンで多かった質問TOP3」「英会話初心者あるある」「旅行英語フレーズ集」など、Copilotに骨子だけ伝えれば10分で投稿文が完成します。以前は月に2〜3投稿がやっとでしたが、今は週2投稿ペースをキープできています。
将来的なCRM連携の可能性
今後はHubSpotなどのCRMツールとCopilotを組み合わせて、体験者のステージ(検討中・返信あり・入会決定など)に応じた自動フォロー設計も視野に入れています。小さなスクールでも、大手と同じレベルの「顧客管理」が低コストで実現できる時代になってきたと感じています。
まとめ——難しいことは何もなかった、必要だったのは「仕組み化する意志」だけ
正直に言うと、私はITが得意なタイプではありません。スマホのアップデートも面倒くさくてよく忘れるし、Excelの関数もほとんど使えない。そんな私でもCopilotを使いこなせたのは、やることがシンプルだったからです。「メモを渡して、下書きをもらって、少し直して送る」——それだけです。
大切なのはAIに何もかも任せることではなく、「自分の代わりに時間を食っている作業」を特定して、そこにAIを差し込むこと。私の場合はフォローメールでしたが、見積もり作成、問い合わせ対応、SNS投稿など、同じ発想で応用できる場面はどの小さなビジネスにも必ずあるはずです。
入会率38%向上という数字はもちろんうれしいですが、それ以上に「今日来てくれた方に、今日中にちゃんと気持ちを伝えられる」という安心感が毎日の仕事を楽にしてくれました。もし同じ悩みを抱えている方がいれば、ぜひ一歩踏み出してみてください。最初のプロンプトは下手でもいい。使いながら育てていけばいいんです。